1992プレミアリーグと2007Jリーグ [ Jリーグ ]
今シーズンからJリーグの中継はCS放送であるスカパーが行い、地上波やBSでの中継は激減する。
イングランドでも15年前に似たような状況が訪れた。
BスカイBによるプレミアリーグ独占放映権の取得。
これにより、プレミアリーグのTV中継を観ようとすると、お金を支払う必要が生じたのである。
当時このニュースに触れた私は、メディア王と呼ばれるマードックが強大な資本力で
庶民からTV観戦という娯楽を奪ったという印象を持った。
ところが、昨年BSiで放送された「サッカーマーケティング」という番組を観て、
私は別の側面があることを知る。
今回の記事では、「サッカーマーケティング」を元にプレミアリーグでの事例を引き、
対比してJリーグの場合はどうなのかを考えたい。
話は1980年代に遡る。
1985年のヘイゼルの悲劇や1989年のヒルズボロの悲劇に代表される、スタジアムで起こった惨事。
これらの背景には、社会問題化していたフーリガンの台頭がある。
結果としてサッカーそのもののイメージダウンを招き、
安全な場所ではなくなったスタジアムからは客足が遠のいた。
リーグおよびクラブはフーリガンへの対応を迫られることになる。
転機が訪れたのは1992年。
BスカイBによるプレミアリーグ独占放映権の取得がそれだ。
BスカイBは92年から96年までの5年間で766億円という巨額の放映権料を支払い、
潤ったクラブはフーリガンの排斥に必要な資金を調達することが出来たのである。
スタジアムは
設備の近代化
グラウンドと観客席を隔てるフェンスの撤去
立ち見席の撤廃
などの策を講じられて観やすく、安全な空間に生まれ変わった。
クラブは観客の再獲得に成功し、放映権料の収入と合わせて経営改善を実現したのである。
BスカイBも最初の1年間で加入者を150万世帯から500万世帯へと大幅に伸ばし、
プレミアリーグはBスカイBのまさにキラーコンテンツとなった。
経営が改善されたクラブは補強資金を増額、スター選手の獲得やチーム力の更なる向上に乗り出す。
そしてプレミアリーグ全体のレベルが上がり、コンテンツとしての価値が上昇、
独占放映権はその後、97年から2000年までの4年間で3,360億円へと高騰することになる。
ここに、ひとつの好循環が形成されている。
起爆剤はもちろん独占放映権の取得であり、その元となっているのはTV中継の有料化、
負担しているのは視聴者である。
リーグ全体のレベル向上という結果からみると、強大な資本にTV中継が奪われたのではなく、
視聴者自らもリーグ発展の一端を担っているという風に考えることも出来る。
もちろん、その負担額の是非については別の議論を要するだろうが
有料化は必ずしも悪ではないということだ。
さて、Jリーグである。
Jリーグとスカパーは、プレミアリーグとBスカイBのような好循環を生み出すことが出来るだろうか。
それは、視聴者に有料化の壁を乗り越えさせられるかどうかにかかっている。
プレミアリーグでは何故350万世帯もの視聴者が有料化の壁を乗り越えたのか。
当たり前の話だが、プレミアリーグがそれだけに値するコンテンツだった、ということだろう。
金を払ってでも観たい、そう思う人がいなければ話にならない。
好循環が生まれる前にも、イングランドリーグはその歴史が価値を高めてきていたのだ。
私たちの周りで考えてみよう。
Jリーグはやっと15年目を迎えたばかり。
代表と引き換え、エンターテインメントとしての地位はそれほど高くない。
Jリーグの中継を観るために新たにスカパーに加入する人はいるだろうか。
あるいはスカパーに既に加入済みでも、これを機にJリーグの中継セットを購入する人がいるだろうか。
2006年12月2日JリーグDiv1第34節 浦和対ガンバ 6.7%(NHK)
優勝決定戦となった一戦でこの数字だ。
かなり厳しいと言わざるを得ない。
壁を乗り越えられなければ好循環は生まれず、逆にジリ貧になっていくと予想される。
プレミアリーグのようには行かないだろうというのが結論なのだが。
1/19追記
SOCCER UNDERGROUND BLOGの秋山対桜庭に関する記事を読んでたら
UGさんが某サイトでどんな内容の日記を書いてるのか気になったので見に行った。
そしたら偶然にも時を同じくして1/16付の日記で、
プレミアとJリーグのサッカー中継について触れられていた。
その中で当ブログの記事にも関連する内容があったので拝借させて頂く。
イギリスでは元々年間3万円近い契約料を払わないと民放すら見れなかった
らしい。
それまで日常的に視聴していた地上波が有料だったなら、
BスカイBへの加入も障壁としてはそれほど高くなかったに違いない。
反対に日本においては、Jリーグとスカパーは歴史的な経緯を乗り越えなくてはいけなくなる。
余計難しいね。