天才であるがゆえに天然 [ 日本代表 ]
W杯アジア地区最終予選第1戦北朝鮮戦は21で日本の勝利。
全く劇的だった。
誰かが筋書きを書いて、双方示し合わせてやっているんじゃないかと思うくらい劇的だった。
しかし、劇的になったのは日本が北朝鮮に合わせてしまっている面が大きい。
北朝鮮の攻撃には迫力が感じられたものの、守備面ではどうってことない印象だ。
サッカーは確かに実力差の現れにくいスポーツだが、
しかしレベル差というものは厳然と存在しているのだ。
選手が目の前の試合に、侮れない試合であると全力で臨むのは当たり前。
観客を金を取って入れている代表、プロ選手ならば当然のことである。
だがこの試合を、最終予選というのは厳しいものだからと苦戦の言い訳にして
改善、修正の糧にしないようでは指揮官は失格だ。
我々が聞きたいのは苦戦を防ぐための具体的施策なのだ。
それほどよく予選のことがわかっているのなら、少しでも苦戦を回避する手立てを考えろ。
それが出来ずに何が監督だと思う。
だが、先日紹介した西部謙司の本を読んでも再確認したが、ジーコは天然型の天才だ。
言ってみれば長嶋茂雄タイプである。
サッカーの守備をどうするかという問題に対して、
思いっきりディテールをすっ飛ばして「一人余れ」と答えるのなんか、
どうすれば打てるのかという問いを発した中畑(だっけ?)に向かって
「来た球をこう打つ」とバットを振る真似をしてみせた長嶋そのままである。
こうしろ、と言われたら何も考えなくても一生懸命練習なんぞしなくても出来てしまう。
正真正銘の天才である。
だから守る時には一人余れと言うだけでみんな守れるものだと思うのだ。
プレーヤーの時の自分がそうだったから。
鹿島の選手時代に宮本征勝監督に、お前は何もしなくていいよなと言い放ったのは
別に監督を見下そうとして言ったわけではなくて、
監督が何もしなくても選手は動けるものだと心底思っていたからなのだろう。
ジーコ自身と同じように。
まさしく天才である。
だが、度を越した天才であるがゆえに、ジーコは天然なのだ。
何も考えずにいろんなことが出来てしまう人間に、教えることなど出来はしない。
そんなジーコに、改善、修正の糧にしないようでは指揮官は失格だ、
と吠えてみたところで何だか的外れだ。
そんなこと監督の仕事ではないと思っているジーコとは議論がかみ合わない。
しかしそれならそれで、もう少し内容のいいサッカーを目指して欲しいと思うんだが。
どんどん勝利至上主義になっていくジーコを見るのは私あたりでもやっぱり寂しい。