ライカールト [ その他サッカー ]
0506シーズンにおける、リ−ガエスパニョーラ優勝とUEFAチャンピオンズリーグ優勝の2冠を成し遂げたバルセロナ。
得られた結果もさることながら、その内容でも
クライフ監督時代のドリームチームと比肩されるほどの魅力を持ったスーパーチームである。
そのスーパーチームにあって、ロナウジーニョを讃える言説は数多あれど、
監督であるライカールトの功績を讃える言説を目にすることはない。
一体監督ライカールトは、今のドリームバルセロナを作り上げるまでに
具体的にどんな役割を担い、どんな指導をしたのだろうか。
バルセロナを見ると、個々の選手が自分の持ち味を生かし、自由にプレーしているように見える。
だが、パスワークの土台となるコンビネーション、頻繁なポジションチェンジを補うカバーリング意識の高さ、
前線からのプレッシング、攻守切り替えの速さなど、組織としての完成度も非常に高い。
ロナウジーニョのみならず他の選手も、個人が互いの密な関係の中で輝いている。
そんな個人としても組織としてもハイレベルな集団を作るのに、監督が関わっていないわけがない。
だがどんな関わり方をしているのかは、外からはなかなかわからない。
2002年以降の日本代表を語る時、現監督であるジーコと前任者であるトルシエを比較して、
ジーコは選手に自由を与えたが、トルシエはフラットなDFラインの3−5−2というシステムに選手を当てはめた
という言い方をよくされる。
だがライカールトも、中盤が逆三角形の4−3−3システムを変えることは滅多にない。
その意味では、選手ありきではなく、まずシステムありきと言える。
それでも選手たちピッチ上で自由を謳歌し、最も美しいとまで評されるサッカーを表現している。
過程はわからない。
しかしライカールトは組織の上に自由を花開かせる方法を知っている
(ここが自由を標榜するだけで無策なド素人監督ジーコと大きく違う点だ)。
もちろん選手に恵まれたのは間違いない。
個人技に優れ、戦術理解力が高く、高性能のフィジカルを持ち、
モチベーションを保ち、逆境を跳ね返すメンタルを有する選手たち。
とは言え、どれだけ優れた選手であろうと、それ自体はチームにおいてパーツに過ぎない。
パーツを組み上げてバルセロナという1つの芸術品に仕上げるためにライカールトがした仕事とは。
その深遠な秘密に触れることは、おそらく一生ないのだろう。