戦術家佐々木監督 [ 女子サッカー ]
女子ワールドカップドイツ2011決勝 日本はアメリカに2-2(PK3-1)で勝利し、初優勝を遂げた。
日本サッカー史上に永遠に刻まれる快挙。
パスで崩すなでしこスタイルはそんなに出せていなかった。
が、驚いたのは、2度のリードを許す展開で、しかもそれぞれ残り21分、残り16分という
充分な時間のない時間帯での失点にも関わらず、やや前に急いでいる印象はあったものの
全員が冷静にプレーし、得点を奪って同点に追いついた精神力だ。
最大の課題であったフィジカルを前面に押し出してくる相手になでしこスタイルを貫いたことといい、
ワールドカップ決勝の舞台でのこの落ち着きぶりといい、
何がここまでなでしこジャパンを変えたのだろうか。
もちろん個々の力量が上がったこともあるだろうが、選手の配置に監督の意図が見えると私は思う。
ボールをつなぐには、パスの精度はもちろんだが、
相手のプレッシャーをかわすボールテクニックが必要になってくる。
サイドバックの近賀、鮫島、ボランチの阪口、澤と
センターバックを除く守備的なポジションの選手は全て、元々は攻撃的な選手であり、
ボールテクニックに優れた選手だ。
彼女達を配置することで、ボール保持力を上げようという狙いだ。
当然考えられるリスクが、守備力の低下である。
それを回避するための第一が、前線からの積極的な守備。
今大会のなでしこジャパンは、これまでよりもさらに前線から激しくプレッシングするチームだった。
当然フォワードには、それが出来る選手を選ぶわけだ。
そして第二に、澤のボール奪取力を生かす真ん中に追い込む守備。
セオリーを覆してサイドではなく真ん中に追い込んでボランチの位置でボールを奪うことにより、
攻撃開始点をひとつ上げるという効果と、
日本にとっては不利なヘディングの競り合い勝負に持ち込まれないよう、
可能な限りサイドからのクロスを回避する効果。
この2点を狙った逆転の発想である。
佐々木監督という人は、インタビューを見る限り人の良いおっちゃんというイメージだが、
なかなかどうして、アメリカのワンバク対策にも見られるように、かなりの戦術家である。
選手が頑張れたのには、選手間の信頼関係はもちろんだが、
監督との間にも相当の信頼関係があっただろうと想像される。
やはり世界一になるようなチームは、いろいろなものを持っているんだなあと思うのである。
なにはともあれ、おめでとう!なでしこジャパン!!