歴史的一戦 [ 女子サッカー ]
女子ワールドカップドイツ2011、準決勝日本対スウェーデンは3-1で勝利。
いろんな意味で歴史的一戦だった。
なでしこジャパンはもともと、パスを主体とするサッカーだったが、
上田監督時代の後期からさらにその特徴を推し進め、
大橋監督就任以降、内容の質の高さでは世界最高峰と言っても過言ではないレベルにまで到達した。
しかし、ドイツやアメリカを代表とする(今回当たったスウェーデンもそうだが)
高さと強さで押してくる相手を大変な苦手としていて、
プレッシャーをかけられるとただボールを大きく蹴るしかなくなり、
自分たちのサッカーができなくることが最大の課題だった。
自分たちの力を発揮出来さえすれば世界の強豪と互角に戦えるのに、
ともすればアジアの相手にもそれが出来ない姿に、私は何度も悔しい思いをした。
観てるだけの私でさえ忸怩たる思いだったのに、
実際のピッチに立っている彼女たちの気持ちはいかばかりだったろうか。
その意味で、準々決勝ドイツ戦の勝利は、
私にはアテネ五輪アジア地区最終予選の北朝鮮戦の勝利を思い起こさせるものだった。
それまで9戦して1勝1分け7敗だった相手に3-0で完勝したあの試合。
国立競技場に3万人の観衆を集めたあの試合は、
私の生涯観戦試合の中で1、2を争う印象的な試合になった。
今でも鮮明に思い出す。
出場権を得られなければ、シドニー五輪以降のような低迷期に陥ってしまうという危機感に覆われた国立競技場。
一度しか勝ったことのない、当時アジア最強クラスと言われていた北朝鮮戦に臨む前の緊張感に包まれた国立競技場。
客観的に見れば敗色濃厚、でもやるしかない、勝つしかないんだという悲壮なほどの決意に満ちた国立競技場。
あの北朝鮮戦の勝利の瞬間は、まさに日本女子サッカー史の歴史的一瞬だった。
準々決勝ドイツ戦も、悲願のメダルを目前に立ちふさがるドイツ、
これまで相手からのプレッシャーに負けて何度も敗れてきた
超えるべき壁であるドイツを相手に、勝たなければならない試合だった。
北朝鮮戦のように崖っぷちというわけではないが、
しかし、この壁を越えられなければ日本女子サッカーに未来なはいという決意の込められた試合。
間違いなくドイツ戦の見事な勝利も日本女子サッカー史の歴史的一瞬だった。
そして準決勝スウェーデン戦。
スウェーデンも北欧だけに体格の面で大きな差があり、ドイツ、アメリカと同じ系譜に並ぶ国である。
序盤はスウェーデンによる前線からのプレッシャーに押されて結構危なかったし実際失点もした。
なでしこのもうひとつの弱点として、先制を許してしまうと、
前へ急ぎ過ぎてロングボールが多くなり、自分たちのサッカーを見失うという点もあった。
が、この試合ではあわてず騒がず、見事な崩しから同点に追い付き、相手を圧倒しての逆転劇。
メンタルの弱かったなでしこジャパンが、勝者のメンタリティを見せ付けた一戦になった。
スウェーデン戦の勝利は、日本サッカー史上初のワールドカップ決勝進出、
3位以内の確定という歴史的意味を持った勝利だったが、
私にはドイツ戦に引き続き、これまで長い間苦杯をなめてきた弱点を克服した試合として
それと同等、あるいはそれ以上に、非常に、非常に感慨深い。