間に合った方向転換 [ 日本代表 ]
W杯南アフリカ2010 グループリーグ第1戦日本対カメルーンは1-0の勝利。
よく頑張った。
後半半ば以降、防戦一方になってからの頑張りにはちょっと胸を打たれた。
チーム一丸となってもぎ取った勝利だったと思う。
しかし、結果とそれに対するひたむきなプレーは充分賞賛に値するが、
(狭義の)内容では観るべきところはなかった。
この試合、日本の勝利の最大の要因は、守備的戦術への移行が功を奏した(間に合った)
ということだろう。
どんなポイントに功を奏したかと言うと
・守備力の強化
・意思が統一されてプレーがはっきりした
この2点かな。
後藤健生のJ Sportsのコラムではもうひとつ、
・サイドバック、ボランチの攻撃参加がしやすくなる
を挙げていて、それは確かにそうだが、
だから攻撃力が上がるわけではないのでここではカウントしない。
もともと4-4-2だったシステムからFWを1つ削って守備専任者にしているのだから、
攻撃の枚数は増えない。
マイナスにはならないという程度のものなので、
あえてポイントとして挙げるべきものでもないだろう。
ところでこの”ボランチ2枚が両方とも攻撃的な4-4-2”は、岡田監督がTVのインタビューに答えて
「世界的にもあまり類を見ない、攻撃的な布陣」とこだわりを持っていたところで、
監督の内面的にも相当大きな舵取りだったと想像される。
話を戻す。
守備はアンカー阿部を配置したシステム変更でかなり安定していた。
またサイドバックも、親善試合の韓国戦から今野を起用し、
攻撃よりも守備に力点を置くようになって、守備の安定に寄与した。
そして実際的な守備力の強化よりも、もっと大きかったのは、
戦い方が整理され、チームとして統一されたことだ。
もう少し言うと、監督が迷いを消してそれまでの
(攻撃的と呼ぶにはイマイチはっきりこうと呼べるものがない)中途半端な戦いぶりから開放され、
全体としてまず守備ありき、攻撃はほぼサイドからのクロスと本田の強さと技術頼み
という形に整理されたことだ。
岡田監督得意の現実路線である。
後半半ば以降の集中した守りも、当初から大枠が決まっていたからこそ
全員がブレずに最後まで粘り強く耐えることができたのだと言える。
(当初から大枠が決まっていたことの証左としては、ボールを奪ったあとのプレーが挙げられる。
試合を通してかなりの場面でボールを大きく蹴るだけのプレーが目立った。
ポゼッション、低い位置からボールを保持して攻撃につなげるプレーは
ある程度放棄していたということだ)
だが、上記のようであれば当然のことながら、
攻撃(狭義の内容)は観るべきところがないということになる。
攻撃のポイントとして取り沙汰されるクロスについても、
クロスはGKとDFの間。早いタイミングでどんどん放り込めという指示があった割には(そこそこいいクロスも上がってはいたが)、
asahi.com「ニッポン進化の予感 堅守と弱点突いた攻撃」
”場所だけアーリー”が多かった。
要は早いタイミングでもなんでもない、DFが待ち構えている状態での
上げる位置だけがアーリー性のクロスが多く、言う程効果的には見えなかったということ。
というわけで、結果は良かったが、(狭義の)内容はダメということになる。
(しつこく”狭義の”と書いているのは、攻撃の質だけが試合の内容ではないから。当然だけど)
しかしまあ、突貫工事的なシステム変更がよく間に合ったものだ。
アンカー阿部の守備力と器用さ、1トップ本田の強さと技術、
という個の能力の高さがなければ実現しない工事である。
開幕前は期待値ゼロだった日本代表だけど、次戦オランダ戦が少しだけ楽しみになってきた。